ママ医師からのアドバイス 赤ちゃんをベビーカーに乗せていいのは何時間まで?

森田先生からのお話です。小さい赤ちゃんから幼児さんには為になるお話です。

 

 

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「ベビーカーに連続で乗せている時間は1時間まで」、そんなガイドラインが、世界保健機関(WHO)から先月末に出されました。

 

 運動は、病気を防ぎ、健康に過ごすために大切な要素です。世界中で、毎年500万人もの人が、生活習慣がもとになった病気で亡くなっているという推計があります。世界中の人が運動不足を解消すれば、狭心症や心筋梗塞などといった冠動脈疾患の6%、2型糖尿病の7%、乳がんや大腸がんの10%はなくすことができるというのです。

 

 運動不足というと大人だけの話と思われるかもしれません。しかし、運動不足は子どもであっても体に悪影響を及ぼします。実際に心筋梗塞などの病気を起こすのは大人がほとんどですが、そのリスクとなる高血圧や肥満は子どもの頃からすでに始まっているのです。例えばアメリカ疾病予防管理センターがまとめた調査では、2013年~2016年のデータで12~19歳の21.8%が肥満、4%が高血圧であり、血圧がやや高めの子も含めると、7人に1人が高血圧の傾向があるという結果になりました。アメリカと比べてそれほど多くはないものの、日本でもおよそ20人に1人の子どもは肥満です。小さい頃から運動習慣を身につけさせてあげることはとても重要です。

 

 WHOが今回発表したガイドラインは、乳幼児の活動と睡眠についてのものです。座って静かに活動する時間、特にスマホやタブレットをじっと見ているだけの時間を減らし、運動と睡眠を増やしましょうという内容になっています。

 

 例えば運動については、次のように示されています。0歳なら、ズリバイやハイハイなど、できるだけ長い時間床で遊ぶこと。まだ動けない赤ちゃんは、1日の合計で30分以上、うつぶせ練習をすること。1~2歳の子は、1日3時間以上、多少なりとも体を動かす遊びをすること。できれば、体温が上がって少し息が切れるくらいのやや激しい運動、例えば早歩きやダンス、二輪・三輪車などもする。3~4歳:1日3時間以上の遊びと、1時間以上のやや激しい運動をすること。

 

 座っている時間については、次の通りです。ベビーカーやハイアンドローチェア、抱っこひもなどに1時間以上連続で乗せておかない。長時間座っていることも避ける。1歳までの子にテレビやスマホ、タブレット等のスクリーンをみせるのは推奨されない。2歳以上ならスクリーンを見る時間は1時間以内にするが、時間は少なければ少ないほど良い。座っている時間は、大人と一緒に絵本を読むのが推奨される。

お昼寝も含めた合計睡眠時間の推奨は、0~3カ月の子は14~17時間、4~11カ月の子は12~16時間、1~2歳は11~14時間、3~4歳は10~13時間となっています。睡眠について書かれているのは、睡眠不足も肥満のリスクになることがわかっているからです。

 

 テレビやスマホをみせる時間にも言及していますが、今回のガイドラインの趣旨は、子どもの精神発達や問題行動などへの影響を減らすこととは少し違うようです。体を動かして活動する時間を確保するために、じっと見ているだけになりがちなスクリーンを見る時間を減らすようにと書かれています。

 

 このガイドラインを守るのは、結構ハードルが高いなというのが私の感想です。実はこのWHOのガイドラインはオーストラリアのガイドラインとほぼ同じ内容なのですが、オーストラリアでどのくらいの子がガイドラインを守れているか、調べた研究があります。

 

 例えば1~2歳の子ども202人について調べたところ、96.5%の子は運動については守れていましたが、睡眠については79.9%、座っている時間については11.4%の子しか守れていませんでした。有意な差ではなかったものの、2つ以上の項目についてガイドラインを守れている子は、そうでない子に比べてBMIが低い傾向にありました。

 

 0歳児は455人を対象に調査したところ、うつぶせ練習時間を30分以上とれているのは29.7%、ベビーカーなどに乗っている時間が守れているのは56.9%、スクリーンを見る時間は27.9%、睡眠時間は58.7%で、全ての項目を守れているのはたったの3.5%でした。ガイドラインを守れている子とそうでない子で、赤ちゃんのBMIや気質のおだやかさに明らかな差はありませんでした。

この結果を見ても、特に0歳の赤ちゃんについては、ガイドラインを守るのは困難な場合も多いことがわかります。うつぶせにした瞬間に泣きだす子もいるし、抱っこしていないとすぐ泣いてしまう子もいます。抱っこひもに1時間以上乗せないというのは、ガイドラインの性質上は睡眠時間を除いて考えてよいと思いますが、起きている間だけとしても、泣いている赤ちゃんをずっと床に置いておくわけにもいきません。ガイドラインの時間の数字は、はっきりとした根拠があるというよりは、複数の専門家の意見を総合して決められているようです。守らないと大変なことになるというわけではないので、一つの目標と考えてできる範囲で生活に取り入れていけたらよいのではないかと思います。

 

 とはいえ、適度な運動や睡眠は、肥満であるかどうかに関わらず大切なものです。例えば、日本では「うつぶせ練習をしなさい」と強く勧められることはそれほどないかもしれませんが、アメリカやオーストラリアなど、海外では新生児からうつぶせ練習を勧めるところもあるようです。意識して、ご家庭で取り入れてみると良いかもしれません。また、日本は子どもも睡眠時間が短い傾向にあります。お子さんの年齢に合った十分な睡眠時間を確保できているか、チェックしていただけたらと思います。

 

 運動や睡眠を改善することで、肥満やそれに伴う生活習慣病を防ぎ、心の健康を保つことができます。小さい頃から運動習慣や良い睡眠習慣を身につけさせてあげることは、大人になっても役立つ一生の財産と言えるでしょう。

 

○森田麻里子(もりた・まりこ)医師/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

 

 

 

 

 

 

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